HIPHOPを聞いても、ダンスバトルを見ても、黒人のリズム感は別格です。
特に、リズム感が弱いと言われているアジア人からするとうらましくて仕方がありません。黒人のリズム感は、日本人には体得できないものなのでしょうか?
そこで、生涯をかけて「黒人リズム感」を研究した日本人ダンサーがいました。名前は、七類誠一郎(通称:トニーティー)単身でアメリカに渡り、ダンス界のトップまで上り詰めたひとです。
マイケル・ジャクソンやマドンナに振り付けを教えながら、夜はストリートでの黒人たちとのダンスバトルに勝ちつづけた。
彼の著書である『黒人リズム感の秘密』には、日本人でも黒人のリズム感を体得できる秘密が記されています。
黒人ダンスと黒人音楽について、ここまで深く語られている本はありません。
目次
黒人リズム感の秘密とはリズムを体幹で取ること
黒人リズム感とは、いわゆる「ノリ」のこと。特に「横ノリ」のことです。
「黒人リズム感」は、一般的に言われるリズム感とは違います。
なので、手や足を叩いたてリズムを取る「リズムトレーニング」では身につきません。
音楽に合わせてリズムを取ろうとする「能動的」なものではなく「受動的」な行為。
曲が流れたときに、体が勝手にゆらゆらと踊り出してしまうような「感覚」です。
ビートと体が一致すること。曲の中にあるビートを、体幹で感じ取ること。
一般的に言われる「リズム感」とは、誰でも訓練すれば身につけるものです。
しかし、黒人リズム感と呼ばれる「ノリ」は、特別なトレーニングが必要となります。
日本で初めて「黒人リズム感」を体得したのが、七類誠一郎さんです。
そして「黒人リズム感」を徹底的に分析して、誰にでも「ノリ」がわかるように体系化したのが『黒人リズム感の秘密』という本。
ダンス、音楽、スポーツと、あらゆることとに通ずる本です。ぜひ、手に取ってみてください。
七類誠一郎とは トニーティーの経歴
まず、七類誠一郎さん(愛称トニーティー)の経歴をざっくりと紹介します。
1983年 東京学芸大学院運動学修了
1985年 26歳で渡米。
1988年 アメリカでプロとして活動スタート
1990年 トニーティーダンススタジオをLAに開設
1991年 MTV10周年TV番組でマイケルジャクソンと共演 科学的な 視点からダンスリズムを分析し、独自のパルスリズム論を構築 する
注目が、学芸大学の大学院まで進んでいることです。
体の機能やリズムを体型的に理解しようとする情熱は若いころからあった様子。
七類誠一郎さんが、黒人リズム感に目覚めたきっかけは「ソウルトレイン」という深夜番組でした。
ノートとペンをもち、テレビにかじりつくように黒人の動きをメモっていたらしい。
そして、広島にあった黒人音楽専門のディスコ「ジャンボ」に毎日通い、営業時間ほとんど踊りっぱなしだった。
なぜ、そこまでするのか。全ては、黒人のように踊りたかったから。
ある日、ディスコでいつも通り踊っていると、体がドラムマシンのようになった感覚が得られた。
瞬間、「おれは黒人になった」と感じた。
七類誠一郎21歳のときでした。
このとき、おそらく日本人で初めて「黒人リズム感」を体得してしまったトニーティー。その時、まだ大学生です。
その後、大学院まで行って「黒人リズム感」を研究しようとしますが、「黒人リズム感」について語れるひとはいない。
そして、自分の感覚を確かめるために、26歳で渡米します。まさに矢沢永吉「成りあがり」の世界。
その後、生涯をかけて『黒人リズム感の秘密』に取り組むことになります。
不気味な東洋人が奇声をあげて挑発するもんだから、向こうは当然むかつく。で、ダンスのバトルになる。相手に仕掛けさせるのもバトルてくにくの一つである。追々ダンサーたちが集まってきてワッカになる。そこで1対1の勝負をする。ひどいときは1対8のバトルをやったこともある。負けたことは一度もない。当たり前だ。
日本人1人で、黒人だらけのディスコに行ってバトルしまくる。そして、絶対に負けない。
とにかく、七類誠一郎さん(トニーティー)は信じられないくらい面白いです。本書の一読をオススメします。
黒人はリズム感がなぜいいのか リズムの取り方が違う
もともと、メロディーを中心とした西洋の音楽と比べ、アフリカの音楽は打楽器が中心でした。
黒人のひとにとっては、リズムの効いた音楽(=踊れる音楽)こそ価値があるのです。
ヒップホップなんて、ほぼリズムの上に言葉を乗っけてるだけです。メロディーではなく、リズムが命。
そして、伝統的にリズムを大事にしてきた音楽文化のせいか、黒人はリズムの取り方が違います。
まず、黒人音楽でのリズムの取り方の基本は、「脱力」です。西洋ダンスの「緊張」とは、反対のはたらき。
そして、体を「脱力」させて手足の力を抜いたら、リズムを「体幹」で取ります。
すると、体全体がリズムの中に入り、ドラムビートから外れない仕組みになっているのです。
黒人のリズム感がいいと言われるのは、「脱力」した体で、リズムを「体幹」で取るからです。
手足でリズムを縦に取ろうとする日本人や白人に対して、黒人は体幹を使って横にリズムをとる。
もし、黒人にリズムテストをしても、そこまで出来が良いとは思えません。
黒人にとって、リズムは取りにいくものではなく「音楽の中で感じるもの」だからです。
そして、黒人の「リズム感がいい」もう一つの理由は、自分たちが気持ちよく踊れる音楽を選んでいること。
白人系のEDMやJPOPなど「縦ノリ」音楽を流しても、黒人はきっと踊れません。それは、自分たちのリズムの取り方と違うから。
「ブラックミュージック」と言われる中でも、ダンスによく使われるのはR&Bやファンクといったジャンルです。
BPM100程度の曲の中に感じるドラムビートを、心地よく揺れるように体幹でリズムを取る。
すると、リズムを自分から取りに行く必要がなくなります。ドラムビートの中に体を埋め込むのです。
そして、そういう音楽でダンスすることに触れているうちに、体内にビートボックスができあがります。
アメリカの黒人少年たちは、ブンブンそこらへんでボイパしてラップを始めます。
ダンスと音楽が、生活の中にあたりまえに存在しているライフスタイル。
まとめると「黒人のリズム感がいい」と言われる理由は、
- 西洋の音楽はメロディーや和声を重視するが、アフリカの音楽は打楽器(ドラム)が中心だった
- 黒人は、脱力して「体幹」でリズムを取るので、リズムが体から外れない
- 「音楽=ダンス」が染み付いている 「体幹」で踊れる曲を選別している
- ダンスや音楽が日常化しているので、体内にビートボックスが出来上がっている
です。
でも、七類誠一郎さんは、「日本人でも誰でも黒人リズム感が得られる」と言っています。
インターロックエクササイズで「黒人リズム感」が身につく
「黒人リズム感」を身につける方法は二つあります。
- ブラックミュージック(踊れる曲)をたくさん聴くこと
- インターロックエクササイズを学ぶ
です。
黒人リズム感には黒人音楽が必要
まず、黒人リズム感(=横ノリ)を感じられるようになるには、黒人音楽を聴くことから始まります。
七類誠一郎(トニーティー)は、とにかくブラックミュージックに詳しいです。
それは、ダンスが音楽を必要としている、と理解しているから。
「黒人のように踊りたかったらまず黒人の音楽学べ」です。
黒人音楽は、創造(クリエーション)としてのアートではありません。もっと、根源的な生の胎動です。
心臓の鼓動に似たようなドラムビートを体で受け止めて、猿のように踊りだす。野生的な「ダンス」衝動です。
インターロックエクササイズで、体幹でリズムを取る
そして、黒人音楽を浴びるように聴いたら、次は「インターロックエクササイズ」です。
インターロックとは、連動という意味。体幹のインターロックを繋げて、身体に「ノリ」を出します。
『黒人リズム感の秘密』には、詳しく説明がありますが、動画で見るのが一番早いですよね。
YouTubeで見つけました。生トニーティーによる「インターロックエクササイズ」入門!
実際のインターロックエクササイズは、2:40〜 です。
インターロックエクササイズには、7種類あります。
バード、スワン、バット、パンサー、ダック、シュリンプ、アリゲイターです。動物の動きからネーミングされています。
それぞれが、体の部分と部分をつなげる体幹(インターロック)に関連しています。
とにかく、この動画にあるインターロックエクササイズを試してみましょう。
ブラックミュージックを聴きながら、この動きを模倣するしかありません。
わたしも、一時期、毎朝これをしていました。いい1日が迎えられますよ。
「黒人リズム感の秘密」がわかるドラム
周りにドラマーが多いので「黒人リズム感」を感じられるドラムは何か、との質問を多くもらいます。
専門的にはわかりませんが、あえていうならロックバンド「エアロスミス」のドラムです。
実際に、『黒人リズム感の秘密』でも、
単に好みの問題ではなく、踊れる曲と踊れない曲を感覚的に察知してしまう。ロックでもエアロスミスは踊れたりするし…
と、あります。
エアロスミスのドラムを聞けば「黒人リズム感」が少し理解できるかもしれません。「Eat The Rich」どうぞ。
エアロスミスのドラマーには、アフリカの血が流れているのではないか。
そう思えるほど、横ノリ的に踊れる曲が多いです。ロックなので、R&Bと比べたら少しテンポが早いのですが。
エアロスミスは「踊れるロック」です。ロック好きは「黒人音楽」の入り口としてエアロスミスから入ってもいいと思います。
リズム感のない黒人 黒人リズム感は後天的
反対に、黒人音楽に触れていなければ「リズム感のない黒人」もいます。
わたしの友人の黒人と日本人のハーフ(日本育ち)は、呆れるほどダンスが下手くそです。
日本で育っているので、黒人音楽に触れてきませんでした。
「黒人リズム感」を身につけるには「黒人音楽」を聞く必要があります。
その「リズム感のない黒人」は、なんとなく流行りのJPOPを聴いています。ビートには、興味がないそうです。
七類誠一郎は、「黒人リズム感」を後天的なものだと言っています。
トニーティー自身もそうだし、インターロックエクササイズで「黒人リズム感」を習得したひとをたくさんみてきたからです。
「リズム感のない黒人」を見つけてもバカにしないでください。環境次第で「黒人リズム感」は誰にでも身につけられます。
七類誠一郎 死亡 トニーティーの訃報
七類誠一郎さんが、まだご存命かどうか気になっている人も多いようです。
どうやら、2010年にトニーティーとして愛された七類誠一郎さんは、お亡くなりになられたそうです。
今から8年前ですし、わたしも『黒人リズム感の秘密』でしか七類誠一郎さんを知りませんでしたが、
こんなにすごい日本人がいたなんて、と思うばかりです。
トニーティーが生涯かけて研究した音楽とダンスの関わり、そして「インターロックエクササイズ」がもっと広まって欲しいです。
さいごに『黒人リズム感の秘密』エピローグ
『黒人リズム感の秘密』はエピローグも最高におもしろいです。
黒人の動きの素晴らしさを肌で感じながらも、それを言葉にしていくことの難しさと理解てもらえないジレンマ……。大学院にいながらもディスコに通い続け、ダンスに埋没する刹那的な毎日……。これでいいのかという焦燥感の反面、どうにでもなれという開き直りが同居する中で、私は1人の女性と出会った。私が25歳の時である。
最高の文章。トニーティーは、妻の古倖さんによって、強く人生を生き抜いてきたようです。
古倖さんは、日本舞踊とバレエを3歳の時から本格的に学んできた生粋のダンサー。
そんなひとが、トニーティーのダンスと視点を「革命」だと認識して支えてくれたそう。
七類誠一郎さんは、「人」にも恵まれるような人がらだったのでしょう。
「ダンスが上手くなりたい」
トニーティーのこれまでの人生はこの一言に尽きる。
「黒人に負けたくない」
この一心で渡米した。そしてこの一心で習得したのがノリのリズムである。
「黒人を超えるために」
編み出したのがパルスリズム理論である。
素晴らしい。シンプルで明快な情熱で、ここまで突き抜けられるなんて。
本当に素晴らしい一冊に出会えました。七類誠一郎『黒人リズム感の秘密』必読です。
とにかくかっこいい黒人音楽(ブラック・ミュージック)をたくさん聞きましょう。
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